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五月に読んだ本2022

 五月はなんかいろいろとあったような気がしたのですけど、よくよく考えてみれば窓の外で吹き荒れる風を眺めていたようなもので自身の実にはなにも起こっていなかったのではないかと。強いてあげるとすると、三回目のワクチン接種をして副反応が存外強く出たために二日ほど寝込んでいたくらいのものでしょうか。
 そんな中で読んだ本。

10.泡坂妻夫「花嫁のさけび」
11.津原泰水「たまさか人形堂ものがたり」

 あいかわらずローペースで二冊だけ。
 ものすごく久しぶりに泡坂妻夫を読んだきがするの10。主人公の伊津子は、映画スター早馬と結婚をした。早馬は数か月前に前妻を亡くしての再婚である。誰もがこの上なく魅力的な女性だったと語る前妻の死は、事故とされているがそこには謎があり……と導入のあらすじを書いただけで、ネタをばらしている気がしないでもないくらい企みに満ちた小説でした。1980年に出た作品ということもあって、映画俳優まわりの表現とか時代がかった感じがあったりはするのだけど、とっても面白かった。大上段に構えずさらりとしたたたずまいをしておいて、丁寧で端正。泡坂妻夫のうまさに酔いしれました。
 やっぱりものすごく久しぶりに津原泰水を読んだ気がするの11(という書き方をすると氏の短編集のことのようだと今気づいた。あくまで個人的な通し番号)
。突然祖父から人形店を譲り受けた澪は、店の事業を人形修理をメインに据える。二人の従業員とともに持ち込まれる人形にまつわる物語に触れていくという短編連作。二度目の文庫化なので、親本から数えて三度読んでいることになると思います。新作の書下ろしが一編くわわっています。「人形とは」という問いかけを根幹に持ちながら趣の異なる話がいくつも並んでいます。個人的にはやはり「最終公演」が好きかなと。物を作る人の狂気と容赦のなさがよく現れていると思います。ごく短いスーパーの二階のやりとり辺りが津原泰水のうまさだとつくづく思ったということも書いておきたい。

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