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八月に読んだ本2022

 あまりの暑さに部屋の中でどろどろにとろけているうちに8月が終わってしまいました。
 四周年を迎えたり、ファーストシングルCDを発売したり、半ば準レギュラーのように4時台のニュースエブリィにアイキャッチで現れたりという推しの活躍をぼんやり眺めているダメおじさん全開でしかなかった感じです。
 そんなどろどろぼんやりな日々の中で読んだ本です。

15.アミの会「おいしい旅 想い出編」
16.津原泰水「たまさか人形堂それから」
17.阿部公房「箱男」
18.相沢沙呼「medium 霊媒探偵城塚翡翠」

 先月読んだ「初めて編」と対を成すアミの会の短編アンソロジーの15。「想い出編」とあるだけあって、動機やらしがらみやらが強めの話が集まってます。個人的に好みの話が多めだった感じでした。
 この本にも「旅の始まりは天ぷらそば」を寄稿された光原百合さんが8月24日に亡くなられたと聞きました。最近のアミの会の本では、尾道のコミュニティFM局「FM潮ノ道」を舞台としたシリーズを書き続けられていました。真尋と局長の楽しく軽妙な丁々発止のやりとりがもう読めないかと思うと寂しくて残念でしかたない。楽しい作品をありがとうございました。

 人形修理をメインにおこなう人形店玉坂人形堂を舞台にしたシリーズの第二作の16。津原作品の中で時折強く現れる「もの創り」とはということに強く言及する一作です。再読になるのですけど、親本を読んだときに気になっていた部分に数行の加筆がされていておおいに驚きました。驚いてから、再文庫化だよなと首をひねりました。どうやら前の文庫を読んでいないのではないかと思われます。創作の姿勢を強く問われるのが息苦しくて少し苦手意識があるせいかもしれません。今回も師村さんに「とにかく手を動かしなさい」と叱責され大いに打ちひしがれています。

 少し間があいての阿部公房二度目の体験である17。冷蔵庫搬入用のような大きな段ボール箱を頭からかぶり町の中で生活する通称箱男を描いた物語。おそらくはホームレスという言葉もひきこもりという言葉も一般には存在しなかったと思しき時代(同様の存在はいたには違いないけれど)に書かれたもので、移動式のパーソナルスペースとともに路上生活をする能動的ひきこもりのお話……かと思ったら、完全なる社会の傍観者である箱男の日記めいた手記を基本に、彼が巻き込まれた事件が物語の中心。見られる存在の看護婦とか偽箱男とか現れ、見る者と見られる者が入れ代わり、そもそも手記を記しているのが誰なのかさえもわからない中、物語はあらぬ方へと……といった感じの得体のしれない作品でありました。「砂の女」のときも感じたのですけど、つげ義春に似た感じの作風だという印象があります。

 作家香月史郎は、大学時代の後輩の女性が相談に行くのに付き添ったことで霊媒師城塚翡翠と出会う。それを機に、二人は数々の難事件を解決していくことになるという短編連作的な形式をとったミステリ長編の18。とにかく面白かったです。
 あまりに丁寧で無駄のないつくり(ある種、あからさまとさえ)なので後半の展開が早い段階で予想がつくのですけど、それでも終盤の真犯人と探偵との対決場面は面白かった。ていうか、それすらも作者の掌の上という感じがする。それぞれの事件の中で、あれだけ振りをしておいてそれに関する言及は結局ないわけとか、これって結局なんだったのよとか、この不自然さには触れないままなわけとか、もやもやしたまま通り過ぎていったのが、すべて最後で意味を持って押し寄せてくる手腕には唸らずにはいられません。
 最後の対決中の探偵のいくつかのセリフに大いに首を縦に振り手を叩いたのですけど、それもまた……て感じで、最後の最後まで楽しませてもらえました。なるほどランキング総なめもするわと納得した一冊でした。

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