読書

五月に読んだ本2024

 五月は微妙に長かったようなあっという間に過ぎていったような。といって、振り返ってみれば何をしていたのかまるで思い出せない感じがあって驚愕してみたものの、ずっとそうであったかと思いなおす。そんな日々の中で読んだ本。

5.津原泰水「羅刹国通信」
6.アミの会「キッチンつれづれ」

 ゴールデンウィーク中に一冊読み終えていたのに、結局二冊しか読んでいないっていう。羅刹国の余韻を長く浴びていたというのもある。
 というわけで、改めて2000~2001年にかけて雑誌掲載された連作が初めて書籍化された5。小学生の時に叔父を殺した少女は、荒野のような世界「羅刹国」で安息の地を求め彷徨うように歩き続ける鬼となった自分の夢を幾度も見る。その夢に触発されるように現実の自分の頭にも「つの」がはえていることに気づく。さらに人間の中に自分と同じような鬼がまぎれていることも知る。て感じのはじまりで、4話からなる。連続している話ではあるのだけれど、一話一話が独立しているというかテイストととか目指している方向とかが異なっていて、ひとつながりの話としては少々いびつな感じがなくもない。何かを匂わせる描写があるにもかかわらず、肝心な部分が見えないままになっている部分もあるので、やはり未完だったのかもしれない気もするけれど、これで充分成立しているとも感じる。感想めいたものは以前に書いたので割愛。三話目の霊園駐車場のシーンは鳥肌が立ったとだけ。
 もう何冊目でしょうかアミの会のアンソロジーの6。タイトルにあるとおり今回はキッチンにまつわる話が8編入っています。テーマゆえか、話の方向性に偏りがあるというか、似たベクトルの話が多かったかなという印象。いつもにくらべて重めな感じもあったし。まあ、キッチンってそういう場所ですよね。読み終えてみて不思議なことに料理の印象はあまり残っていない。

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四月に読んだ本2024

 さてもさてもゴールデンウィークである。まあ無職の人間には直接かかわりはないのだけれど、近所の八百屋がカレンダー通りに休むのでそこだけ注意しないといけない。
 で、4月に読んだ本の話。

4.柴田よしき「お勝手のあん」

 相変わらず月に1冊という為体。
 3月の16日にサイン会があるからと友人に連れ出されて上大岡まで出かけていって買ってきた4。久しぶりに出かけた横浜はえらく遠くて、こんなところまで三日連続で往復してたとか、5年前の俺はずいぶんと元気だったななどと思った記憶があります。あと、この日食べたカツ丼が豚カツがふわふわでえらくおいしかった(でもちょっと高かった)。そんな感じで買って帰ったものの、まだ満願を読んでいたし直後にはエルスリーもあったしで読み始めたのは四月に入ってからになりました。
 閑話休題。
 幕末の頃、親に売られた「おやす」はちょっとした偶然もあり品川宿の老舗宿屋「紅屋」で女中見習いの奉公人として働くことになる。料理の才を持つおやすと周りの人達との関わりを書く時代小説シリーズの1冊目です。今後どうなるのかはわからないけど、この巻だけでいえばこれといった大きな事件があるわけではなく(いや、なくもないのだけど)周辺のちょっとした出来事が積み重なっていく感じです。時代小説の醍醐味というか、実在の人物も登場したり。肩肘張らずに読めて面白い本で、今の自分にもちょうどよかった。ただ、奥付の日付である昨年末の段階ですでに八巻まで出ているというのが、ちょっと問題といえば問題かしら。

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三月に読んだ本2024

 くしゃみと鼻水と肌荒れに悩まされているうちに四月になっておりました。
 最近、花粉症になったと思って検査したらアレルギーじゃなかったという話を複数目にして、やっぱりこれってアレルギーどうこうじゃなくて花粉の物理攻撃なんじゃねえのって思っている今日この頃です。
 そんな話はさておき、三月に読んだ本の話。

3.米沢穂信「満願」

 またしても1冊しか読んでない。理由はいろいろとありはするものの、何にせよ読書欲が減退しているのは否めない。

 少し前に話題になっていた本という認識だったんですけど、親本の初版は2014年出版ですって。10年前の本だったことにまずびっくり。
 6編の短編が入った短編集で基本的にはミステリで間違いないんですけど、味わいはホラー的だったりコメディ的だったりもする。とにかく上手いと感心しきりの短編集。本当に面白くてことさら時間をかけて読んでいて、それが月に一冊しか読めなかった理由の一つだったりもする。躓いて時間のかかる本っていうのはけっこうあるわけだけど、楽しくて時間がかかる本というのもあって、こういうのに出会えた時は本当にうれしいですね。いや、面白かった。

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二月に読んだ本2024

 あっという間にもう3月。
 まくらの話題もない感じなので、早々に本題。2月に読んだ本です。

2.相沢沙呼「invert 城塚翡翠倒叙集」

 今月もやっぱり一冊。
 確定申告だったり、花粉にやられたりといろいろあったりなかったりもするのだけど、一番大きな理由は「龍が如く8」に没頭してたからです。
 とかいいながら、この本自体にも理由はあって、微妙に厚みがあったし、何より城塚翡翠の(演じる)人物像がとてもイラつく感じで、読み進めるのに時間がかかってしまったというのがあります。いや、イラつかせているのはあえてだと作中でも語られているので、術中にはまっているということだと思うのだけど。それが、読み進める障害になるのはどうなのかしらと思わなくもない。
 という感じで、霊媒探偵城塚翡翠を主人公とするミステリの第二作。タイトルにもあるように、倒叙ものを三編集めた中編集になります。
 倒叙というのは、犯行場面を最初に提示して犯人が明白になっている状態で物語が進められる形式で、よく刑事コロンボや古畑任三郎が例として示されますね。今作も、古畑を意識しているのか探偵から解決編への導入を示すシーンがあったりして様式美へのこだわりを感じます。探偵のしかけに右往左往する犯人というお約束もしっかり存在しているし。
 内容を細かく語れない種類の作品だし感想を述べづらいのですけど、一作目と同様ちゃんとしているというのが一番大きな感想になるかと。表層的なところでは独特な作品のふりをしてはいるんだけど、非常に模範的なミステリだなと。
 そういえば、この作品てドラマ化されてるんですよね。原作読んでないからと後半を見てないんですけど、最後の一遍はどう映像化されてたんでしょう。ちょっと気になります。

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一月に読んだ本2024

 気がつけばひと月まるまる放置していた。何かあったわけではなくて、何もなかったので書かなかっただけの話。一週間弱帰省をしていた以外は、ひたすら引きこもっていた。いろいろと思うことがなかったわけではないけれど、書くほどのことかという感じで。
 それはそれとして、一月に読んだ本。

1.宮内悠介「月と太陽の盤」

 一冊である。本も読んでなかったんだなと自分でも驚く。いったい何をしていたのか。
 副題に「碁盤師・吉井利仙の事件簿」とあるとおり、放浪の碁盤師利仙を探偵役としたミステリの連作短編という形式。なのだけど、肝はそこではなくて、老境にさしかかり生涯最後の碁盤を作るべく材料になる木を探して旅する碁盤師と、彼を(勝手に)師と仰ぐ若き囲碁棋士の話で、終わりが見えてきた年齢にいる人間が次の世代に何を残せるのかって話かと。囲碁のことも囲碁の世界のこともとんとわからないけど、楽しめた。ただ、ミステリ的な驚きみたいなものをあまり求めてはいけない気がする。

 そんな一月。

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十二月に読んだ本2023

 昨日は、水科葵バースデイライブを本人と見る同時視聴配信を見て、その中でおめでとうメッセージをくれていた人たちの悉くがこの日(12月30日)にライブをしていたという事実に感心するやら笑ってしまうやらという時間を過ごし、その後夜中に「正解は一年後」を見て、その中で発表された「あつしの名探偵」を番組終了後に購入しそのままプレイしていたのだけど、途中で現実での(都内への)外出を求められてそこで頓挫して寝ました。マニュアルプロテクトかよっ。
 開けて今日はその求められた都内へ……行く余裕はなく、明日からのための買い物(日常的な食料品の買い出しなのだけど、売り場が正月仕様なので少し困ったり)したり、部屋の掃除したりで一日が終わろうとしています。こうして一年が暮れていく感じ。
 で、今年の最後の読了本。

23.麻耶雄嵩「メルカトル悪人狩り」
24.似鳥鶏「推理大戦」

 銘探偵メルカトル鮎を主役に据えたシリーズの短編集である23。このキャラも随分長いこと追っているなと、しみじみ。で、最初からそうなのだけど、「銘探偵」という肩書が示すとおりの特殊な役回りの探偵で、そのせいで作品自体もいつもかなり独特です。本格推理の約束事を律儀なほどに踏まえておきながら、ともすればアンチミステリなんじゃないかというくらい歪んでいる。だが、それがいい。
 大好きな作家の新作なんだけど、確実に趣味が合わないとわかっている人間が薦めていてあまつさえそれが帯に書かれていると手に取るのはためらうよねっていう24。こちらも、メルカトルとは別ベクトルでミステリという約束事の中でどう逸脱するのか的な趣の作品でした。作家の実力が保証するレベルの楽しさは味わえるものの、個人的には(似鳥作品の中でも)あまり好きではない種類だったという、本を手に取る前に抱いた危惧がそのまま読後の感想でした。あと、小さな瑕疵ではあるんだけど、中に「庭付きの広い庭」という謎の文言があって、それが理解できなくて数日そこから先に読み進められなくなったということがありました。

 一年で24冊。月2冊か……もう少し読みたいよね。てか読めってな。

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十一月に読んだ本2023

 なんか、いろいろあったようななかったような感じで11月が過ぎていった。ライブのために外に出てたのが遠い昔のことのように感じる。
 最近、炬燵の布団を出しました。その際、天板の上を整理していたら、いつもらったものかスクエニのロゴが入ったQUOカードが出てきました。年末のパーティのものなので、少なくとも2019年以前なのは間違いない。……ここ、そんなに片付けてなかったってこと?
 そんなこんなの11月に読んだ本。

22.アミの会「おいしい旅 しあわせ編」

 先月末からしばらく前の本の余韻の中にあったし、月の前半は読書の時間はなかったしで一冊です。

 ということで、何冊目になるのかアミの会の短編アンソロジーです。以前の2冊が好評だったのか、今回は旅と食べ物に題材をとった「おいしい旅」の三冊目になります。同じテーマでもう一度というのは珍しいかも。
 しあわせという題材ゆえか、旅ゆえか、自分探しというか自身の輪郭を再確認するような話が多めだったかと。それでも、各々別ベクトルな感じでそれぞれに面白かった。体調なんかで、好みの一遍が変わる感じ。
 前の二冊にあった旅に出られない不自由さとかもどかしさみたいなものは影をひそめていて、それだけ現実の時間が流れているのだなというのも感想のひとつ。

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十月に読んだ本2023

 だいぶ寒くなってきていよいよ冬間近だなと思っていたら、急に暖かくなったりしてもう何が何だか。明後日から何を着ていくのが正解なのでしょうか。帰りは寒そうな気がするし……。
 それはそれとして、10月に読んだ本です。

19.法月綸太郎「頼子のために」
20.有栖川有栖「高原のフーダニット」
21.津原泰水「夢分けの船」

 意図したわけではないのだけれど、三冊とも作者の年代が近い感じです。この世代の人達が書くものが個人的に心地いいのかもしれない。多く触れてきただけかもしれないけど。
 作者と同名の主人公が探偵役のシリーズものの19。長編です。もともと1990年の作品で、新装版の文庫(それでも2017年の本)で読みました。ある事件の犯人による手記への疑問から、事件の真相を探すという内容。そこには様々な人の思惑も絡んでって感じで。初期作品だからかしゃちほこばった感じはあるんですけど、すでに確固たる世界観を持った作品で楽しめました。
 火村英生を探偵役にしたシリーズの短編(中編)集の20。ちょっと変わり種の作品が三編はいっています。「ミステリ夢十夜」なんかはそうとう変わっている、というかミステリかどうかも怪しいところはあるものの、総じてしまえばやはり火村英生のシリーズでいつもどおりに楽しんだとしかいいようのない感じで。
 で、21。津原泰水の遺作となる長編です。というものの作品自体のおこりは結構前で、下手をすると「ブラバン」の直後くらいにはタイトルを耳にしていた記憶があったりなかったりする。そう言う意味では、ようやく完成してようやく出てくれたという一冊(そうした作品がまだ数作あって、それらの書籍化も進行しているらしい。まだ楽しみはつづくようです)。
 映画音楽の作曲家を志して音楽の専門学校に入学し愛媛から上京した秋野修文は学校に紹介された物件に住まう。ピアノつきで完全防音でありながら格安のその物件には、かつて同室で自殺した女生徒の幽霊が出るといわれるが、修文には見えず。といった始まり。あえて分類するなら、青春小説ということになろうかとは思うけれど自信はない。変にこうだろうと決めつけをせずに書かれている物語に身をゆだねるのがよい気がする。それが心地よい。
 つくづく文章の上手な人だと感動する。本当に、ただ文章を読んでるだけで幸せになれる小説ってそうそうないと思うんだ。これがあるんだから大丈夫。
 しばらく次の本が手に取れなくなるっていうのが難題といえば難題。

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九月に読んだ本2023

 毎年このくらいの時期になると、暑さ寒さも彼岸までというのは案外正しいのかもしれないと思っていたものなのですけど、今年はちょっとしつこすぎじゃありませんか。もう10月に入ったんですけど。
 というわけで、9月に読んだ本の話です。

17.有栖川有栖「長い廊下がある家」
18.浅倉秋成「六人の嘘つきな大学生」

 2冊です。
 いつも通りな感じですけど、月の前半にずっとマンガを読んだいたから物語の摂取量は普段より少し多めかも。最近完結したといことで「違国日記」と「重版出来」を。どちらも、物創りをする人の話だったため、胃がきゅっとなる感じが多々。
 閑話休題。
 火村英生を探偵役としたシリーズの短編集である17。四編収録。もう長いシリーズだし、細かくどうこうというところもないわけですけど、四編それぞれベクトルが違っていてとても面白かったとだけ。個人的に好きだったのは「天空の眼」……火村先生出てこないけど。
 少し前にけっこう話題になっていた記憶のある18。文庫になっていたのを見かけて手に取ってみた次第。構造はミステリで、おそらく謎が主体なんだろうと思うのだけれど、個人的にはそんなことはわりとどうでもよくて就活小説として本当に面白かったという感想。
 で、ちょっとネタバレになる気のする感想も。
 とあるIT企業の新卒採用試験で最終選考に残った六人。最終選考はグループディスカッションで成果によっては六人全員を採用する可能性もあると言われ協力してその準備に取り掛かる、が直前になり採用は一名ディスカッションでその一人を候補者六人自身で選出すると選考内容が変更7されるというはじまり。大まかな構成として、就活時期の前半と数年後の物語を描く後半の二部構成になっている。で、前半部分に後半の時制から当時を振り返るインタビューパートが挟まれるという構造になっているんですけど、その最初のインタビューパートにあったしかけがわりとあからさまだったので、前半の構造がそこで見えてしまった(この時点で、事件とよべるものはまだ起こっていない)。少なくとも、採用されたのが誰で誰が犯人とされるのかはここでわかる。二部構成になっているので、その役割自体がひっくりかえされるのだろうというところまでは見えた。ものによっては、この時点で興醒めして楽しめなくなる物語もある(というか多い)のだけど、この話はそうはならずに最後まで楽しめた。
 いくつかの場面で、尻切れトンボのようにシーンが切れてこれってなんなの、この後何があったわけ。とか、どうしてこういうことが書かれているのだろうとか、これは何とかひっかかる部分がたびたび現れるのだけど、それらはすべて最後に意味を持っていると判明する。意図的で自覚的な物語だということ。まあ、身振り手振りが少し大きいということでもあろうかと思うわけですけど。
 もう一度いう。とにかく就活小説として本当に面白かった。

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八月に読んだ本2023

 なんかまたひと月の間日記を書かずに過ごしてしまった。
 この間の日曜に、前にここにも書いたアタック25で優勝した友人夫婦の祝勝会をしてきました。と称しただけで、昼間から酒飲んでくっちゃべってきただけなのですけど。それぞれの近況なんかを報告しあいながら、益体のないはなしをあれこれ。それぞれに様々なエピソードが飛び出してきて、みんなちゃんと生きてるんだななどと思ったり。そんな中で、やっぱり僕はすでに幽霊かなんかなんじゃないかと。
 そんな事件も変化もなにもない生活の中で読んだ本であります。

14.内藤了「夢探偵フロイト マッド・モラン連続死事件」
15.西尾維新「掟上今日子の推薦文」
16.西尾維新「掟上今日子の挑戦状」

 とある私立大に通う主人公は留年回避のための単位を餌に、大学内の鬱蒼とした森の中にある夢を研究する研究室に出向くことに……とはじまる14。同じ悪夢を見続けた末にその悪夢に殺されたかのように飛び降り自殺をするという事件が起こる。同じような悪夢に苛まれる人が複数存在し、死んでしまったひとも何人か存在することも。と、タイトルに反して探偵も存在しなければミステリでもなく実はホラーだった……と思って読み進めていったら、後半に大きくハンドルを切ってしっかりとミステリとして着地するという。大きな仕掛けや劇的な何かが存在するわけではないのだけれど、しっかりとまとまった端正な作品でした。

 一日ごと(寝て起きたら)に記憶がリセットされる忘却探偵の掟上今日子を探偵役に据えたシリーズものの2冊目と3冊目の15と16。たしかドラマがけっこうおもしろかったので買ってたものの1冊目を読んで以降放置していたのだと思います。だもんで、話ごとに語り手が違うことにすら驚いてしまった次第。推薦文は長編で、挑戦状は中編が三編という構成。
 とにかく何がビックリって登場人物の少なさに驚く。長編のミステリで主だったキャラクタが4人て。うち二人は、探偵と語り手です。挑戦状でも探偵、語り手、犯人の三人しか登場しないのが基本で、内一遍は犯人すらまともには登場しないなんてことにも。
 なんでそんなことになってるかといえば、この小説が掟上今日子という人物を描くことに終始しているからだと思う。それ以外の人達は(事件そのものも)彼女の輪郭を浮き彫りにするために存在しているのである。そういう作品だと理解して楽しむものだろう。だもんで、ドラマはすごい頑張ってたんだなと再認識したというのが実は一番の感想。

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